秋の食材
秋の食材は、季節ごとの変化を楽しむだけでなく、私たちの健康にも大きな影響を与えます。秋は、気温が下がり、湿度も低くなるため、体調を整えるための食材が豊富に揃う時期です。ここでは、秋の代表的な食材について、その栄養価や健康効果、そして薬膳の観点からどのように活用できるかについて詳しく見ていきます。
特に乾燥からくるくしゃみや咳など気管支のトラブルが多く発生します。肺や喉を潤す食材を取り入れ、旬の食材から皮膚の乾燥を防ぎましょう。
秋に起こりやすい主な症状
秋に起こりやすい主な症状
- 咳
- 痰
- 気管支炎
- 喘息
- かぜ
- 鼻炎
- くしゃみ、鼻水
- 皮膚の痒み
- 便秘
- 下痢
中医薬学によると秋の呼吸系の症状は、大気の乾燥がもたらす「燥邪(そうじゃ)」によるものであり、皮膚や頭髪はかさかさに尿量が減って便がかたくなるなど体内水分量の減少により様々な影響を及ぼします。
秋に旬な食材
1. 秋の食材の特徴とその重要性
秋は、実りの季節であり、自然が豊かに実を結ぶ時期です。この時期に収穫される食材は、夏の疲れを癒し、冬に向けて体調を整えるために最適です。秋の食材は、一般的にエネルギー源となる炭水化物が豊富で、体を温める作用のあるものが多く含まれています。これにより、気温の変化に対応しやすくなります。
2. 秋の代表的な食材とその栄養価
2.1. さつまいも、長芋、里芋
・さつまいもは、秋の代表的な根菜で、豊富な食物繊維とビタミンC、カリウムを含んでいます。食物繊維は消化を助け、腸内環境を整える効果があります。ビタミンCは免疫力を高め、カリウムは血圧の調整をサポートします。また、さつまいもには「ベータカロテン」が含まれており、抗酸化作用があり、肌の健康や視力維持にも役立ちます。
・長芋【旬:10−11月 甘味・平性】
自然薯などのやまいもは、芋類で唯一生で食べることができます。脾・胃を補い、腎機能を強化します。別名「山のうなぎ」と呼ばれるほど滋養強壮に適した食材です。咳や痰を和らげる作用や肌を潤す作用のほか、長く食べ続けると目や耳などが良くなると言われています。
・里芋【旬:10‐2月 辛味・平性】
ほとんどの芋類は甘味ですが、里芋は唯一の辛味に属しています。辛味は、滞った気の巡りを良くして気持ちを落ち着けたり、瘀血を除去して血行を促すといった作用があります。
2.2. かぼちゃ
かぼちゃも秋に旬を迎える野菜で、ビタミンA、ビタミンC、カリウム、食物繊維が豊富です。ビタミンAは目の健康や免疫機能をサポートし、ビタミンCは抗酸化作用があります。カリウムは体内のナトリウムとバランスを取り、心臓の健康に寄与します。また、かぼちゃの糖質はゆっくりと消化されるため、エネルギーが持続的に供給されます。
2.3. 栗
栗は、エネルギー源となる炭水化物が豊富で、ビタミンB群、カリウム、マグネシウムも含まれています。ビタミンB群はエネルギー代謝を助け、マグネシウムは骨や筋肉の健康を維持します。また、栗の食物繊維は腸内環境を整える効果があり、便通改善に役立ちます。
2.4. りんご
りんごは、秋に旬を迎える果物で、食物繊維やビタミンCが豊富です。特に「ペクチン」という水溶性食物繊維が含まれており、これが腸内環境を整え、コレステロールの低下に寄与します。ビタミンCは免疫力を高め、健康維持に役立ちます。また、りんごのポリフェノールには抗酸化作用があり、老化予防や心臓病のリスクを低下させるとされています。
2.5. きのこ
秋はきのこが豊富に出回る季節です。しいたけ、えのき、まいたけなど、様々な種類のきのこがあり、それぞれに異なる栄養素があります。きのこは低カロリーでありながら、ビタミンD、食物繊維、抗酸化物質が豊富です。ビタミンDは骨の健康に寄与し、食物繊維は腸内環境を整える効果があります。また、きのこには免疫力を高める成分も含まれており、風邪の予防にも役立ちます。
・椎茸(しいたけ)【旬:4‐5月、9‐11月 甘味】
不老長寿の妙薬として有名ですが、漢方では風邪と切り傷に良いと言われています。気を補って内臓機能を強化、風邪の予防や疲労回復、骨や歯を丈夫にする作用があると言われています。
・舞茸(まいたけ)【旬:10‐1月 甘味・平性】
見つけた人が舞がるほど喜んだが語源とされる舞茸ですが、中医医学では五臓の動きを活性化し、生命エネルギーを補う作用があるとされています。生活習慣病の予防にも効果があるとされています。
・しめじ【旬:10‐11月 甘味・平性】
「香り松茸、味しめじ」と言われるほどの味が魅力的なしめじ。味はもちろんのこと、アミノ酸をバランス良く含み、がん予防に効果的であると言われているβ‐グルカンも含んでいます。
落花生(らっかせい)【旬:10‐11月 甘味・平性】
ピーナッツですが、豆の仲間。脾・肺の働きを整え、肺を潤す作用があるとされています。
銀杏(ぎんなん)【旬:10‐11月 苦味・平性】
はるか太古から存在し、氷河期を耐え抜いてきた「いちょう」は、とてつもない生命力で溢れています。中医学で銀杏は、肺の熱を取って潤し、咳や痰、慢性の気管支炎などを鎮めるとされています。
柿【旬:9‐11月 甘味・寒性】
「柿が色づけば、医者が青くなる」と言われるほど薬効を持つとされています。中医薬学でも利尿作用が高く、熱を下げ、胃腸を強くするとされています。
梨(ナシ)【旬:9‐11月 甘味・微酸味・寒性】
中国では2000年前以上から梨は「百果の宗」として果物の中でも特に重宝されてきました。90%が水分のため、肺を潤し、喉の乾きを癒やす働きに優れています。
いちじく【旬:8‐10月、3‐5月 甘味・平性】
中医学では解毒作用が強く、痔やいぼ、喉の痛みなど腫れ物全般に効果的であるとされています。
すだち【旬:8‐10月 酸味・寒性】
「柑橘類の小公子」と称されています。徳島県の特産であり、大分県にある「かぼす」も同様の効果があるとされています。中医薬学では、魚やきのこの毒消しとして焼き魚や天ぷら、蒸し物に添えられています。
プルーン【旬:7‐9月 酸味・平性】
西洋すもものことをいいます。欧米ではミラクルフルーツとも呼ばれ、カロテンの含有量が群を抜いているのが特徴です。肌荒れ改善やアンチエイジングには欠かせない果物です。
秋刀魚(サンマ)【旬:9‐11月 甘味・平性】
秋の味覚といえばサンマです。「サンマが出ると按摩がひっこむ」と言い、健康食品といしても大人気です。気を補い、疲労回復促進、胃の働きを補い、虚弱体質を改善すると言われています。
鮭(サケ)【旬:9‐1月 甘味・温性】
北海道が有名な産地ですが、産卵のために海から川を遡る、生命力溢れた鮭は免疫力向上やアンチエイジングに効果を発揮すると言われています。
鯖(さば)【旬:9‐11月 甘味・酸味・温性】
脾・胃の働きを補うため、気力を増して全身に活力を与える効果もあるとされています。
3. 秋の食材を活用した薬膳レシピ
3.1. さつまいもと栗のスープ
材料:
- さつまいも 2本
- 栗 10粒(むき栗)
- 玉ねぎ 1個
- チキンブイヨン 500ml
- 塩、こしょう 適量
- オリーブオイル 適量
作り方:
- さつまいもと栗は皮をむき、適当な大きさに切ります。玉ねぎはみじん切りにします。
- 鍋にオリーブオイルを熱し、玉ねぎを炒めます。玉ねぎが透明になったら、さつまいもと栗を加えさらに炒めます。
- チキンブイヨンを加え、材料が柔らかくなるまで煮込みます。
- スープが煮えたら、ハンドブレンダーで滑らかにします。塩、こしょうで味を調えます。
このスープは、さつまいもの甘さと栗の風味が絶妙に組み合わさった、体を温める秋にぴったりのレシピです。
3.2. かぼちゃの薬膳炊き込みご飯
材料:
- かぼちゃ 200g
- 米 2合
- しいたけ 5枚
- 鶏肉(もも肉)150g
- しょうゆ、みりん、塩、こしょう 適量
- だし 400ml
作り方:
- 米は洗って30分水に浸しておきます。かぼちゃは一口大に切り、しいたけは薄切りにします。鶏肉も一口大に切ります。
- 炊飯器に米、だし、しょうゆ、みりんを入れ、よく混ぜます。
- 上にかぼちゃ、しいたけ、鶏肉を乗せて、通常通りに炊飯します。
- 炊き上がったら、全体をよく混ぜて、塩、こしょうで味を整えます。
かぼちゃの甘さと鶏肉の旨味が融合した、秋の味覚が楽しめる炊き込みご飯です。
4. 薬膳的観点から見た秋の食材
薬膳では、秋は「乾燥」と「収穫」の季節とされています。このため、秋の食材は「潤い」を与えるものが推奨されます。さつまいもやかぼちゃ、りんごなどは、体内の乾燥を防ぎ、潤いを与える効果があります。また、きのこ類は「免疫力を高める」食材として、季節の変わり目にぴったりです。
さらに、秋は消化機能が活発な季節でもあるため、体を温める食材や消化を助ける食材が適しています。例えば、さつまいもやかぼちゃは温かい食材で、消化を助けるとともに体を温める効果があります。
まとめ
秋の食材は、季節の変わり目に体を整え、健康を維持するために非常に重要です。さつまいも、かぼちゃ、栗、りんご、きのこなど、秋に旬を迎える食材は、それぞれが持つ栄養価や健康効果によって、私たちの体調をサポートします。
薬膳の観点からも、これらの食材は体の潤いを保ち、消化を助け、免疫力を高める効果が期待できます。秋の豊かな食材を活用して、健康的で美味しい食事を楽しんでください。